★☆アンケート結果第2位 カール・ハインツ・シュナイダー☆★

2位になったのでお話&イラスト★









『シュナイダー、また岬が来てるぜ、お前も来いよ』

若林からの電話。

『俺、今からマリーを迎えに行くんだ。後で行くよ』






『シュナイダー、遅かったじゃないか!』

カルツが陽気な声をあげる。

『遅くなって。。ちょっと・・・ってなんだ、ソレ?』

暖かい部屋に入って若林の顔を見つめる。
若林の左頬に真っ赤に付いた痣を認めた。
ブスっとした顔で俺に手をあげる。

『源さん、トランプで負けてナぁ』

カルツがクックッと笑う。


『なんの賭けをしたんだ?』

『カルツ、言うなよ』

『ソレは・・・』




カルツが言いかけた時、
岬が湯気の立つ鍋を抱えて台所から入って来た。


『シュナイダー』


岬の顔がパッと輝く。
俺の胸が一瞬、音を立てて締め付けられた。

『若林、どうしたんだ?』

俺の問いに岬が怒ったような顔をする。

『僕がご飯作ってる間に2人でトランプで賭けしてたんだって』

言いながら戸棚より4つの皿を取り出す。

『岬、もうホント謝るからさ』

若林がムッツリした声をあげた。


『だから、何?』


俺の問いに岬が困ったように言う。

『信じられる?若林君僕にキスしようとしたんだよ!!!』

『未遂だってば』

『源さん、トランプに負けて俺が出した課題、
 岬を驚かす に挑んだワケだ』

『ビックリしたけど・・・』

『思いっきり叩かれたんだぜ』

若林が笑ってサッカー雑誌をカルツに投げつける。

『岬は驚いたんだから俺の勝ち ダロ』



チラと岬を見やった。
俺と目が合うと、恥ずかしそうに目を逸らす。




それから4人、いつもの様に笑いながら
夕食を食べて話に花を咲かせて行く。

スポーツ選手にあるまじき勢いで
若林とカルツは酒をのんで、
居間のソファに丸くなった。

『コイツら・・・』

岬が他の部屋から毛布を運んで、
2人にかけてやっている。

『俺、帰るよ』

上着に手を伸ばした時、
岬の顔をまともに見た。

台所からの逆光の中で岬の柔らかそうな髪が揺れる。









岬が若林の元に初めて訪れた時から
今回が何回目なんだろう。

岬はフランスから時折このドイツを訪れて
俺やカルツや若林の輪に溶け込んで
サッカーしたり一緒の時間を過ごす。

俺達3人、このドイツで、いや、世界を相手に
頂点を目指していたから、その輪に溶け込むのは
普通の人間には容易では無いだろうに
岬はサッカーを通じて、また、人間性を通じて
俺達の間に巧く溶け込んでいた。

俺達に比べればその小さく華奢な容貌、
いつも絶やさない明るい笑顔。


そんな彼に必要以上に惹かれるのに
俺にとって時間は必要なかった。



だけど。

岬は若林の友達で
いつも彼の家に滞在する。
それは
俺にとって苦痛以上の何モノでも無く
何故か夜、彼らの家から戻る時、
胸が締め付けられる思いを味わう。

本当はちょっとでも長く
岬の側で時間を共有したいけど
俺の中のそんな気持ちに
まだ、名前すら付けれていなかった。








俺と目が合って
岬がまた顔を伏せた。

『僕も・・買い物行くよ』


岬の手が上着を掴む。








『あの2人、よく飲んでたね』

岬が上着を着ながら優しく笑った。

『うん。アイツら、明日練習来るかな?』

『大丈夫、僕が連れて行くから』


玄関ホールのオレンジ色の電球が
投げかける短い影を俺はジッと見つめる。

なんだか、今言わないとずっと言えない気がする。
だけど、言ってしまったら明日は来ない気がする。


『岬、何買いに行くの?』

俺が岬の方を見下ろすと
またも岬が目を逸らした。



『お水。明日、きっと2人が飲みたいと思うから』



誰かが昔、言ってた気がする。

好きな人の目ってマトモに見れないんだって。
若林ともカルツとも普通に接してるのに
最近、俺とまともに目を合わせた事がない。

(若林がキスしようとしたって・・・)


俺の中で引っかかってる事実。










『岬』


呼びかけてから自分の行動に驚く。


『何?』


ドアのノブにかかった岬の手が止まる。


言えない事を言おうとする時、
なんでこんなに胸が詰まるんだろう。

俺に見つめられた岬が
何故こんなに小さく見えるんだろう。


岬は若林の友達で俺達の仲間だ。


『岬がなんでドイツに来るのかは分ってる』


そう、若林が居るからだ。


『だけど』


重く溜まった息を吐き出した。


『俺の方も見て欲しいなんて贅沢かな?』








岬が近くに寄ってきて
俺の上着を掴む。



『そんな事・・・』


岬が俯いたまま
俺の胸に頭を付けた。


『今は君の事ばかり見てるのに』




吐き出した重い息の代わりに
心臓が奏でる音を聞いていた。







岬の頬に触れてみた。
微かに震えてるのがわかる。



『俺が君に触れたら若林みたいになる?』























『いいのか、源さん』

『カルツ、うるせえぞ』

『だって源さん・・・』


若林が深々とため息を付いた。


『ぶたれた所、まだ痛ぇ・・・』

『あの真面目なシュナイダーがなあ』

『ソレを言うなら、あの岬が!だ』


またカルツがクックッと笑う。


『振られたなあ』

『まあ、源さんにはワシが居るから気を落とすな』

『アホかッ・・・』




若林とカルツの呟きが消えた暗闇に
扉の閉まる音はなかなか聞こえて来なかった。










な〜んちゃって★

















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